「静かな衰退」と闘う技術|力が落ちたなと実感したら読む話

「走ってるのに、なんだか体が変わらない」
「食事を減らしたのに、タイムも筋力も落ちた気がする」
社会人やマスターズアスリートが直面するこのような悩み。
その背景には、年齢による筋量・筋力の低下や、誤った食事制限が隠れているかもしれません。
実は、30代以降の体は静かに衰えはじめており、筋肉は「使わないと落ちていく」もの。
特に短距離系アスリートに重要な速筋繊維から先に減っていきます。
また、糖質を避ける食事が、かえって筋分解(カタボリック)を招き、パフォーマンス低下の原因となることも。
では、筋量や筋力を守るためにはどうすれば良いのですか?
この記事では、社会人・マスターズアスリートが取り組める具体的な方法を紹介します。
- 食事の工夫
- 筋肉を落とさないトレーニング方法
について、実践的な知識と方法をお届けします。
「もう年だから仕方ない」とあきらめる前に、ぜひ読んでみてください。
パフォーマンスが上がらない理由を考える

社会人になり、練習が限られできることも取捨選択を余儀なくされ、それでも自己ベストを追いかけて魂を削る毎日。
しかし、思うように練習も積めず、そんなことでは試合結果もついて来ず…。
走り込みが足りないのか。もっと走らないと…。
いや。ちょっと待ってください!
走り込みも大事なことは理解しています。しかし、少し視野を広げてみませんか?
一般的な話になりますが、30歳以降は筋量が1年間0.5〜1%、筋力は1.5〜3%ずつ減ると報告されています(ACSM, 2020)。
特に不活動状態では加速的に進行する傾向があります。
運動習慣があれば、減少率は抑えられますが、学生時と比べるとトレーニングの量が減ってしまうことがほとんどですので、これからは筋量や筋力を意識的に考えなくてはなりません。
30代から始まる静かな衰え
筋肉は、30代を境に少しずつ筋量も、筋力も低下しはじめます。
いやいや、空き時間で走ってるから大丈夫だよ。
残念ですがそれは違います。走るだけでは筋肉に運動刺激が足りず、減っていきます。
筋量を増やすには、筋量を増やす刺激を入れなくてはならないし、筋力も同様です。
僕も30代後半ですが、トレーニングを怠ると筋量が減り体重も落ちるし扱えていた重さも扱えなくなっていきます。
また、筋力低下の特徴として「速筋繊維」から優先的に落ちていくことも確認されているので、特に短距離選手は致命的な問題となってくるでしょう。
筋肉は使わないものから落ちていくのです。
確かに、日常で速筋繊維を使うことはほぼありません。
ウェイトトレーニングを日常的に入れている人は、これらの減少率は劇的に抑えられる、という報告も多数確認できます。
偏った食事習慣や、栄養摂取の問題
筋量が落ちていなくても、筋出力が落ちてしまうとパフォーマンスに悪影響を及ぼします。
ここでは食事を軸に話します。
中でも大事な栄養素は糖質です。
世の中ではタンパク質の方が良い、糖質はあまり良くないイメージを持たれがちですが、アスリート、いや人間にとって糖質は車のガソリンです。
糖質が吸収、分解されグリコーゲン(覚えなくて良い)が体内に枯渇していると、スクワットやスプリント、ジャンプなどのパフォーマンスが明らかに低下します。
それはグリコーゲンが瞬発系、中強度運動の主エネルギー源だからです。
また脳のエネルギーも糖質が分解されたグルコース(ややこしい! 覚えなくて良い)です。つまり枯渇すると集中力や注意が散漫になり、トレーニングフォームやランニングフォームが崩れやすくなります。
さらにもっと怖いのは糖質が枯渇するとカタボリックを起こしてしまうことです。
カタボリックとは、糖質が極端に不足した状態が長く続くと、身体は筋肉を分解して糖を作り出す「カタボリック状態」に移行することがあります。
これは高強度トレーニングを行うアスリートにとっては特に注意すべきリスクです。
これが僕が一番恐れていることで、一日の中で間隔を空けて糖質を一定数摂り続けている理由です。
筋分解が怖くて毎日団子を手放せません。
筋量、筋力を落とさせない2本柱

ここからは具体的にどう取り組めば筋量や筋力を落とさずに競技と向き合っていくのかお伝えしていきます。
闇雲にトレーニングしたり、糖質を摂取しても結果が出なければ無駄になってしまいます。
まずは、「落ちる前に支える柱」を作らなくてはなりません。
大人のアスリートは工夫して頭を使って戦うのです。
ウェイトトレーニングを取り入れる・見直す
まずは王道。ウェイトトレーニングの頻度や、中身を見直しましょう。
もし、今まで取り入れていなかった方は、取り組むだけでも大きくパフォーマンスが改善するかもしれません。
また、今までも取り組んでいた方は、頻度を変えてみたり、取り組んでいるメニューを変えてみたりと刺激を変えてみることを検討しましょう。
筋肉は、同じ刺激を取り入れていても適応を起こしてしまうので、身体への変化は鈍化していきます。
だからこそ、刺激を変えることが大切です。
具体例をあげるので、参考にしてください
筋量UPメニュー(変更前)
スクワット 70kg 10回 3セット
ベンチプレス 50kg 10回 3セット
デッドリフト 75kg 10回 3セット
筋量UPメニュー(変更後)
スクワット 50kg 10回 5セット
ベンチプレス 30kg 10回 5セット
デッドリフト 変更なし
筋量を増やすには、扱う重量だけでなく「総重量(重さ×回数×セット数×反復距離)」が重量です。
例えば、70kgを3セット(2100kg)行うよりも、50kgで5セット(2500kg)行った方が総重量が多いため、筋量は増えていきます。
ここでの落とし穴は、20kg重さが減るので体感がかなり楽に感じるところです。それにより、こんなんで良いのか? と不安になってしまうことです。
僕はお客さんに指導する時、筋量を増やすフェーズでは軽くても5セット取り組んでもらっています。
そして、初めての方は「こんなに軽くて良いんですか?」と不安になり疑問を投げかけてきますが、良いんです。
軽くするメリットはもう一点あります。
それは反復距離を出しやすく正しいフォームの習得にもなります。
軽くても動かす距離が長ければ、鍛えられる筋群は幅広い可動域で力発揮ができるようになります。
そしてみなさん筋量が増えて「今まで全然増えなかったのに、ちゃんと増えましたね」と驚かれます。
実際にアメリカとカナダの共同研究でも発表されています。
1週間単位のウェイトのセット数を実験したものです。
週あたりのセット数が増えるほど筋肥大が促進される。
デッドリフトは変更しません。なぜなら身体への負荷が増えすぎてしまうからです。
アスリートは身体あってのパフォーマンスですから、翌日の練習も考慮しなくてはなりません。
筋量UPの目的で他の種目で調整しつつ、デッドリフトは現状の設定で十分です。
また筋力UPには基本的に高重量を持ち上げていく必要があります。
ここでは総重量は気にせずに、自分が取れる最大可動域で行うことが求められます。
アスリートは広い可動域の中ですべからく筋力を発揮することが求められます。
しかし、高重量のスクワットで10cmしかしゃがまないなんて光景も目にします。
あれはあまりにも範囲が限定的すぎるので、実戦的ではありませんので真似をしないように。
アスリートは競技中、どのポジションでも力を出さなくてはなりません。
だからこそ、「深くしゃがんでも力を出せる」ことが重要です。
糖質摂取量を見直す
忙しい社会人はお昼ご飯も簡単に済ませてしまいがちになります。
僕も毎日やってくるお昼ご飯はちょっと面倒くさくて苦手です。
先にもお伝えしましたが、糖質が慢性的に不足すると、エネルギーを補うために筋タンパク質が分解されやすくなり、結果として筋量の低下が起こる可能性があります
ですので改めて糖質について考えてみましょう。
IOC(国際オリンピック委員会)が出しているアスリートの糖質の指針は以下の通りです。
- 瞬発系アスリート 体重あたり 6g
- 持久系アスリート 体重あたり 8~10g
日常的に運動している人や筋量を増やしたい人にとっても参考になります。
僕の体重が63kgくらいですので、僕は1日に63×6=378g必要だということです。
これを初めて知った時、全然足りていなくてショックを受けました。
僕は筋肉が増えにくい体質だから…。なんて過去の永田が言っていましたが、意識的に取り組んだらちゃんと増えました。
このように63kg×6g=378gが基本量ですが、筋肉の発達を感じやすかったのは1割多めの410g前後でした。
もちろん、運動量や体質によって個人差がありますが、ひとつの目安にはなると思います。
まず筋量が増えなくて困っている方は実際の糖質量をモニタリングするところから始めましょう。
400gくらいの内訳サンプルはこんな感じになります。
🍚 朝食(約100g)
- 白ごはん(200g)…約74g糖質
- 納豆(1パック)…脂質約5g・糖質約3g
- 野菜たっぷり味噌汁(豆腐・ネギ・わかめ)…糖質約2g
- バナナ(1本)…糖質約22g
🥪 昼食(約105g糖質)
- ごはん(300g)…糖質約95g
- みそ汁(しめじ・油揚げ少量)…糖質3g
- ヨーグルト(プレーン・無糖100g+ハチミツ小さじ1)…糖質8g
🍙 間食(約90g糖質)
- おにぎり 2個(ツナマヨ or 昆布)…糖質約80g・脂質約6g
- プロテインドリンク(200ml)…糖質約10g・タンパク質20g
🍲 夕食(約95g糖質)
- うどん(乾麺120g)または白米300g …糖質約90〜102g
糖質をまとめていますが、脂質も低いものを選んだものになります。
どうぞご確認くださいませ!
…とか言われましても無理ですよね。
ご安心ください。十分承知しております。
400gの糖質を食事から摂るのは正直大変です。僕がよく使う“秘密兵器”が、コンビニの3本入りダンゴ。
1パックで約100gの糖質が摂れるので、朝や間食に重宝しています。
あなたもぜひダンゴを手に取り、ダンゴの素晴らしさをご体感ください。
まずは自分の糖質摂取量が足りているのか足りないのかを知りましょう。
まとめ:トレーニングと食事で筋肉を守ろう
筋肉を守るには日々のトレーニング方法や、食事の摂取量で変化していきます。
自分の感覚的なトレーニングや食事を客観的に数値にすることは、現在地を知ることでもあります。
迷いがある状態や、数値的な目標がないとゴールに向かうにも行動を起こすことが困難になってしまいます。
まずは数値で明確なゴール設定をしましょう。
まずは今日から、自分が摂取した糖質量を計算してみましょう!
そしてウェイトトレーニングの総重量も計算してみるところから始めるのです。
それこそが自身の筋肉を守ることであり、パフォーマンスを向上させるきっかけになります。
あなたのトレーニング法やフォーム改善、食事の見直しを一緒に考えましょう。ジムでの体験やカウンセリングもございますのでご利用くださいませ。
表参道にございますAGELCApersonalgymぜひチェックしてみてください。あなたの力になれれば幸いです。

